保険代理店のための分かりやすいDX 25
「火災保険の2025年問題」とは
~スマホで契約更新が可能に まずは火災保険からスタート~
昨年末12月掲載のコラムにて、「2025年の崖問題」と呼ばれる日本のITシステムに関する危機的課題が指摘されていることを紹介しました。この問題は2025年までに多くの企業が抱える既存システムの老朽化やブラックボックス化が深刻化し、適切な対応がなされなければ、経済損失が年間12兆円に達する可能性があるとされている問題です。
さて、保険業界では「火災保険の2025年問題」と呼ばれる満期を迎える火災保険の件数が大幅に増える問題があり、この問題の背景には、保険を契約した銀行の統廃合や担当者の退職、代理店における人員不足が重なり、顧客が火災保険の更新をおろそかにし、未契約状態になる可能性があります。
この課題に対応するため、ネット完結による火災保険更新ができるように各保険会社が整備を進めています。早くも三井住友海上火災保険とあいおいニッセイ同和損害保険は8月にも個人向け火災保険の更新手続きをネット上で完結するサービスを始める予定とされています。このサービスは代理店を介さずに顧客のスマートフォンから火災保険の見積もりや継続手続きができるシステムで、もともと契約手続きをしていた銀行や不動産会社に出向く必要がなくなります。東京海上日動火災保険では、既に契約者にQRコードが付いた更新案内を順次送付し、スマートフォンで読み込むと補償内容やおすすめプランが表示され、確認してもらい契約手続きが可能です。損保ジャパンでは、10月に満期を迎える契約から順次スマートフォンで手続きが可能になるとのこと。
この流れは火災保険にとどまらず、自動車保険や生命保険など、他の分野にも波及すると考えられます。特に自動車保険では、テレマティクス保険の普及が進み、運転データを活用した個別リスク評価が可能になっています。これにより、安全運転を心がけるドライバーには保険料が割安になる仕組みが導入され、ネット経由で契約・管理できる保険商品がますます増加しています。
火災保険料率は、インフレや自然災害の激甚化により値上げが続く一方です。新たに住まいを建てる20~30代の人々にとっては家計に大きな負担がかかりますので、火災保険は安いところで加入、つまりネットで契約手続きを行うことが当たり前になり、これまで日本では緩やかにしか増えていってなかったネット完結型の契約割合も増えていくことが考えられます。一方で、過去に長期で火災保険の契約をしていた世代の人々については、対面での説明や募集が望まれることも多いかもしれません。
このように、保険業界全体がDXを推進する中で、代理店の役割も変化しています。単なる契約手続きの代行ではなく、DXを活用した新たな価値提供が求められています。例えば、顧客のライフプランに基づいたリスクマネジメントの提案や、デジタルツールを活用した継続的なフォローアップが重要になります。
DXの進展とともに、保険代理店にはどのような取組みが求められるかが、今後の大きな課題となるでしょう。
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第3365号(週刊) 新日本保険新聞[損保版]2025年4月28日