保険代理店のための分かりやすいDX 33
個々人の熱意だけでは限界がある
———DXは質の高い顧客体験を誰もが再現できる仕組みである
保険加入を検討する顧客が営業担当者に求めていることは、すでに明確になっています。NTTデータ経営研究所の調査では、「わかりやすい説明」「公平な比較」「無理のない提案」「手続きの速さ」「契約後のフォロー」など、8つの要素が高く評価されました。どれも“当たり前”に見えるかもしれませんが、裏側を見れば、実はどれもアナログ運用のままでは実現し続けることが難しい領域です。
例えば、商品説明。説明できるだけでは不十分で、「お客様が短時間で理解できる状態」まで落とし込むことが求められます。公平な比較も、パンフレットを並べるだけではなく、「この担当者は本当に中立だ」と信頼される透明性が必要です。無理な提案をしないとは、単に慎むことではなく、顧客の人生を自分ごとのように考えた上で導く姿勢のこと。そしてフォローは、連絡するではなく、「この担当者は一生付き合える」と思われる関係性の構築に他なりません。
こうした価値を全員が安定して提供するためには、人の熱意だけでは限界があります。ここに必要なのがDXです。顧客情報・既契約・意向・提案履歴・書類進捗・フォロー時期。これらが散らばっていれば、どれだけ経験豊富な担当者でも最適な判断はできません。
しかし逆に、これらが一元化され、誰でも迷いなくアクセスできる環境が整えば、営業品質は“属人の才能”から“組織の標準”へと変わります。DXは効率化のための仕組みではなく、誠実で質の高い顧客体験を、誰が担当しても再現できる仕組みなのです。
この構造は、10月末にアマゾンが発表した1万4000人の人員削減とも重なります。業績絶好調にもかかわらず削減を決断した理由は、コストではなく「オーナーシップ文化を守るため」でした。オーナーシップとは、「誰かに言われる前に、自分はどう動くべきか」を自ら決める姿勢。AIが出せるのは“情報”であって、“意志”ではありません。指示待ちでできる仕事はAIが代替する時代。しかし、
・どんな未来を選ぶのか
・なぜ自分がそれをやるのか
・顧客のためにどんな価値を届けたいのか
といった“意志を伴う行動”は、人間にしかできません。DXが整った環境は、まさにこのオーナーシップを持つ人の能力を最大化します。仕組みが整っているからこそ比較は公平に、提案は真摯に、フォローは丁寧に。担当者の熱意が、そのまま顧客価値へ変換される状態が実現します。
これからの保険代理店に求められるのは「DXで土台を整え、オーナーシップで“人にしかできない価値”を届ける組織」。その両方が揃った代理店こそ顧客に選ばれ続ける存在になれるのです。
そしてこの“選ばれ続ける力”こそ、AI時代を生き抜く代理店の最大の競争優位になります。
本年の締めくくりにあたり、改めて「意志ある仕事」と「仕組みの進化」の両輪を回し続ける重要性を実感します。来年はこれまで以上にDXとオーナーシップを掛け合わせ、成長のギアを引き上げましょう。
▼保険代理店のDXはエムアイシーへ
https://www.viewsystem.info/
第3397号(週刊) 新日本保険新聞[損保版]2025年12月22日
📘 この記事は、クラウド型顧客管理システム「MIC-ViewSystem」を開発した、現役の保険代理店である株式会社エムアイシーがお届けしています。